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第十四章・4

 呑気な玄馬は、大学で落ち合った幸樹に叱られた。 「いけませんよ。早く帰って、台風に備えないと」 「しかし、少し雨風が強いくらいで」 「今回の台風、結構強いらしいですから。そうだ。玄馬さん、食料とかちゃんと備えてますか?」  それには、首を横に振る玄馬だ。  なにせこのところ仕事が忙しく、マンションには寝にだけ帰っている。  帰らないことも、ざらなのだ。  二人はマーケットに寄って、食材や非常用食料を買い込んだ。 「こうしてるだけでも、充分デートになるか」 「ふふ。嬉しいです」  一緒にカートを転がし、あれでもないこれでもないと物を選ぶ。  今までにない安らぎを、玄馬は感じていた。 「少しだけ、私のマンションへ寄って行かないか? コーヒーでも淹れよう」 「じゃあ、少しだけ」  まだ本格的には荒れていない天気の中、二人は玄馬のマンションへと帰った。

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