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第十四章・5
「すごい……。広いし、きれいだし、豪華……」
玄馬のマンションへ着いた幸樹は、そのリビングに圧倒されていた。
大きなガラス天板のテーブルを、心地よさそうなソファが囲んでいる。
採光の良い窓は、まるで展望台だ。
高い天井に、品のいい電燈。
瑞々しい観葉植物に、美しい熱帯魚のひらめく水槽。
「気に入ったか? 何なら、泊っていってもいいぞ」
「そうしたいなぁ」
そして、ずっと一緒に暮らしたい。
しかし、それは言わずにいた。
そんなことを言っても、玄馬を困らせるだけなのだ。
(僕は、一般人。そして、玄馬さんは、ヤクザさん)
先だっても、遠山に強く言われた。
『幸樹くんが堅気の人間である限り、ヤクザには絶対に嫁がせないからね!』
食材をフリッジに収めながら、幸樹は小さな溜息をついた。
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