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第十四章・6

 玄馬の淹れたコーヒーを飲み、買ってきたケーキを食べ、二人は他愛もないお喋りをした。 「玄馬さん、こんなにコーヒーを淹れるのが巧いのなら、うちで働いてくれればいいのに」 「マスターが怖いから、やめておくよ」 「動植物、お好きなんですか? グリーンやお魚が、きれいです」 「いや、装飾にと思って。どちらも、メンテナンスは業者に頼んでるんだ」  そんな話をしている間に、もう18時になってしまった。 「僕、そろそろ帰らないと」 「そうだな。台風がこれ以上強くなると、危険だ」  ちょうどそこで、幸樹の携帯が鳴った。 「遠山さんだ」  出ると、やけに心配そうな遠山の声が聞こえてきた。 『幸樹くん、今どこにいる?』 「あ、えっと。友達のアパートにいます」 『その友達の家に、今夜は泊めてもらえないかな?』 「え!?」

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