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第十四章・8

「もしもし。喜んで幸樹くんを、お預かりしますよ」 『ん? あ! その声は、九丈さん!?』 「このマンションなら強固ですから、台風もしのげます」 「そんな馬鹿な! 幸樹くんに、やっぱり帰ってくるように言ってくれ!」  それは危険ですから、だの、責任を取ってお預かりします、だの玄馬は言っていたが、やがて苦笑いしながら幸樹にスマホを渡した。 「ようやくお許しを得たよ」 「すみません」 『幸樹くん? くれぐれも節度を守って、泊めてもらいなさい。いいね?』 「はい」 『台風が行ってしまったら、すぐに帰って来るんだよ!?』 「解ってます」  まだ言い足りなさそうな遠山だったが、ようやく通話を終えた。  お泊り。 (僕、玄馬さんのところに、お泊りだ!)  降ってわいたラッキーに、幸樹は胸を弾ませた。

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