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第十四章・9
思いがけない幸運に浮かれているのは、玄馬も同じだった。
いそいそと部屋着を用意し、幸樹に渡してきた。
「かなり大きいと思うけど。これに着替えてくつろいでくれ」
「ありがとうございます!」
「あ、そうだ。先に、バスを使うといい。私は食事を準備するから」
「そんな。僕がやりますよ」
いいからいいから、と幸樹はバスルームに押し込まれた。
広いバスタブに、美しいタイルの床。
外が見えるガラス張りの窓に、グリーンが飾ってある。
「素敵なお風呂」
鼻歌を歌いながらシャワーを浴び、バスタブに身を沈めると外の様子がよく見えた。
「晴れてたら、いい眺めなんだろうな」
しかし外は暗く、雨粒が叩きつけている。
まぁ、そのおかげで、玄馬のマンションに泊まれるのだが。
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