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第十四章・10

 幸樹はバスルームから出てふわふわのタオルで体を拭き、部屋着に着替えてキッチンへ向かった。 「何だ、早かったな」 「お料理、お手伝いします」 「いや、もうできたぞ。さあ、座って座って」  玄馬はレトルトのカレーに肉を増し、サラダを作って待っていてくれた。 「料理は苦手でね。こんなもので、すまない」 「いいえ、すごく美味しそうです!」  喜んでカレーライスを食べてくれる幸樹を見ていると、玄馬は心が満たされていく感覚を覚えた。  足りなかった幸樹成分が、どんどん体に入って来る。 「幸樹」 「何ですか?」 「キス、してくれないか?」 「い、今ですか?」  照れる幸樹に、玄馬は顔を近づけた。 「カレー味のキスをしよう」 「もう。仕方がないですね」  ちゅ、と短いキスを交わした。  キスは本当にカレーの味がしたが、甘い夜の始まりを告げていた。

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