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第十五章 同じ香り
バスを使うと、玄馬はリビングで少しだけ酒を飲んだ。
「幸樹も、やらないか?」
「僕はまだ、20歳前ですから」
玄馬に飲酒させられたとなると、遠山がカンカンになって怒るだろう。
「節度を、守らないと」
「マスターはやっぱり、怖いなぁ」
二人でくすくすと笑い、ウイスキーとレモネードのグラスを合わせた。
そうしながらも、玄馬はノートパソコンを開いて時々難しい顔をしている。
「お仕事、大変なんですね?」
「商店街の再開発、そろそろ工事に入るんでね」
遠山のカフェはそのままに、残してくれると約束してくれた玄馬だ。
幸樹は、それに深く感謝していた。
だがしかし。
「玄馬さん。もしかして、カフェを残すから工事がやっかいなんじゃないですか?」
「幸樹は、そんなこと心配しなくてもいい」
これは、私の問題だ。
そう、玄馬は幸樹をなだめた。
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