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第十五章・2

 ウイスキーを飲み終えるころ、玄馬は両手を天井に向けて挙げた。 「ええい、面倒だ! 後は、明日!」 「玄馬さん、大丈夫ですか?」 「幸樹が傍にいたんじゃ、仕事も手に着かないな」 「す、すみません」  いや、謝ってもらうことじゃない。  玄馬は、幸樹の髪をくしゃりとなぶった。  そして彼をそっと抱きしめ、その髪の香りを深く吸った。 「幸樹が、私と同じ香りになってる」 「シャンプー、すごくいい匂いです」  今度は、ウイスキー味の、キス。  幸樹は、すっかり成熟した大人の香りを、玄馬から感じていた。

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