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第十六章 続く嵐

 玄馬は、目を開けた。  まだ、頭がすっきりしない。  だが、体だけは妙にさっぱりしている。 「ベッドに寝ているということは、私はマンションに帰ったのか」  仕事仕事で、ベッドで眠るなんて久しぶりだ。 「……幸樹」  そうだ。  昨日は台風が来て。  そして、幸樹が泊ったんだ。  体が軽いのは、そのせいだ。  彼が、その身を私に許してくれたから……。 「久々に、悦かったなぁ」  目じりを下げたニヤケ顔は、スケベな男に見えてしまうだろうか。  だが、玄馬の隣に幸樹は眠っていなかった。  ベッドには、玄馬しかいない。 「まさか、もう帰ってしまったんじゃないだろうな?」  慌てて大股でリビングへ出ると、キッチンから良い香りが漂ってきた。

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