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第十六章・2
「おはようございます、玄馬さん」
「幸樹。おはよう」
「勝手をしてすみません。朝食の準備をしていました」
勝手だなんて、そんな。
「こんな嬉しいことが、あるか?」
「もう、このまま食べちゃいますか? それとも……」
幸樹の言葉に気が付いたが、玄馬はパジャマのままなのだ。
「支度を、してくるよ」
シンクの鏡に姿を映すと、そこには寝起きのだらしない男が。
「幸樹に、カッコ悪いところを見せてしまったな」
だが、悪い気はしない。
自分の全てを、ありのままを知ってほしい。
そう思って、彼をこのマンションに泊めたのだから。
顔を洗い、歯を磨き。
髭をあたって、髪を梳き。
部屋着に着替えて、玄馬は幸樹の待つキッチンへ足を向けた。
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