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第十六章・8
幸樹は、お客さんじゃない。
じゃあ、何だ?
そんな意地悪なことは言わない、玄馬だ。
言えば、自分自身も傷つくことは、解り切っているから。
(パートナー、に)
パートナーに、なりたい。
玄馬の思いは、幸樹の願いは、静かに膨らんでいく。
おやつの後、幸樹は玄馬の仕事を見守った。
彼の投げかける質問に、答えながら。
「幸樹なら、商店街に何が欲しい?」
「授乳室はどうですか? カフェに時々、そんなお母さんが頼って見えます」
「なるほど。他には?」
「バリアフリーは欠かせませんね。障がいのある方にも心地よく訪ねていただきたいです」
うんうん、とうなずきながら、玄馬はそれを形にしてゆく。
二人三脚で青写真を作る作業は、とても楽しかった。
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