153 / 195
第十七章 父について
台風一過。
青い空のもと、玄馬と幸樹は遠山の待つカフェへ戻った。
「玄馬さん、遠山さんが怖くないんですか?」
「一発殴られるくらいの、覚悟だ」
笑い合いながら、カフェのドアを開けると、いつもと変わらぬ良い香りが二人を出迎えた。
「ただいま帰りました」
「幸樹くん! ……と、九丈さん」
そんな露骨に嫌そうな顔をしなくても、と玄馬は重い箱をカウンターに置いた。
「遅くなりましたが、お中元です。と、言いますか、幸樹くんのお礼です」
玄馬は、幸樹が新しい商店街のアイデアをたくさん出してくれたことを、遠山に話した。
「おかげさまで、この後は仕事が早く進みそうです。幸樹くんのおかげです」
「そ、そうですか。では、こちらもお礼を。コーヒーでも、飲んでいってください」
玄馬と幸樹は、顔を見合わせた。
てっきり遠山から、嫌味や説教のひとつでも食らうと思っていたのに。
(何か、遠山さんの様子が変だな)
いつも、流れるような動きでコーヒーを淹れる遠山が、どこかたどたどしい。
玄馬にコーヒーを勧める、という点も妙だ。
そうこうするうちに、幸樹と玄馬の前にカップが出された。
ともだちにシェアしよう!