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第十七章・7
次に、幸樹は父の名を訊ねた。
「父の名を、教えてください」
はい、と堀口は柔らかくていねいな口調で、幸樹に明かした。
「泉田 敬之さまです」
それには、幸樹より玄馬の方が速く反応した。
「何だって!?」
「玄馬さん、お父さんをご存じなんですか?」
ご存じも何も、と玄馬は唇を震わせた。
「泉田組の、組長だ。以前話した、翔くんのお父さんだよ」
それには、幸樹も絶句した。
(ヤクザさんの、組長さん!? それに、あの翔さんのお父さん!?)
遠山は、さらに動揺していた。
「まさか、幸樹くんの父親がヤクザ!?」
だが、堀口は涼しい顔だ。
「ヤクザ、とはまた古風な。今は『泉田建設』として社会貢献をされていますよ」
一気に不安になった遠山は、幸樹に向き直った。
「幸樹くん。どう? お父さんに、会うかい?」
父がヤクザでは、会いにくかろう。
そう、考えたのだ。
だが、幸樹はすでに落ち着きを取り戻していた。
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