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第十八章・2
本当なら、私がついて行きたい、とも言っていた遠山だ。
ただ彼は、ヤクザである玄馬の方に圧力があると思った。
今このシーンでは、しがないカフェの店主である自分より、玄馬の力が勝ると感じていたのだ。
『九丈さんを信じて、幸樹くんを託すよ』
『ありがとうございます。幸樹くんの安全は、必ず保障します』
『頼んだよ』
こんないきさつを経て、玄馬と幸樹は泉田邸の敷居をまたいだのだ。
広い玄関には、すでに幸樹の訪問を知っている黒岩と翔が待っていた。
「お久しぶりです、九丈さん」
「黒岩さん。その節はどうも」
「こちらこそ。いろいろとお世話になりました」
そんな大人の挨拶を尻目に、翔は幸樹に手を差し伸べた。
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