164 / 195

第十八章・4

(日本家屋だから、和室だと思っていたのに)  しかし、幸樹はすぐにそのわけを知った。  そこで待っていた男は、車椅子に乗っていたのだ。  男は円卓から少し体を動かし、幸樹の方に向き合った。 「幸樹か?」 「はい」 「傍に来て、顔をよく見せてくれ」  遠山がこの場に居たら警戒しただろうが、幸樹は素直に男のそばに寄った。  そして話がしやすいように、その場にひざまずいた。  男が幸樹に手を伸ばした時に、玄馬が静かに教えてくれた。 「幸樹。この人が、泉田 敬之さんだ。君の、お父様だよ」 「……!」  父の大きな手が、幸樹の頭に乗せられた。  優しく髪を撫でた、その男。  彫りが深く、高い鼻を持っている。  猛禽類を思わせる顔立ちだったが、その目は穏やかだった。 「お父さん……!」  幸樹の目に、熱い涙が湧いてきた。

ともだちにシェアしよう!