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第十八章・6

 まだ幸樹の頭はぼうっとしていたが、掛けて出された紅茶をいただく頃になると、ようやく周囲が見えて来た。  部屋の一角には、医療用器具と医師、看護師が控えている。  父・敬之に万が一のことが起きた場合、すぐに対応できるようにとの配慮だろう。 (僕、興奮して泣いちゃった。あんまり、お父さんを困らせないようにしないと)  自分の一挙手一投足が、父の寿命を左右するような気分だ。 「幸樹くん、そんなに緊張しないで。うんとお父様に甘えていいんだよ」 「翔さん」  今まで放っておかれた分、存分に甘えるといい。  そんな風に、翔が笑ってくれた。 「全くだ。幸樹、これからは、今までの分たくさん我がままを言ってくれ」 「我がままだなんて。お父さんは、これまで僕やお母さんの生活費をくださっていたんでしょう?」  大学に進学できるだけのお金も、口座に振り込まれていた。  これが愛でなくて、なんだろう。

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