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第十九章 二人の気持ち

『泉田さん。どうか、幸樹くんと結婚させてください!』 『幸樹、結婚してくれ』  この玄馬の言葉に、止まってしまった幸樹の時間。  その時を再び動かし始めたのは、自らの意思だった。 「お父さん、僕も玄馬さんと一緒になりたいです。どうか、結婚を許してください」  幸樹はどうなんだ、と敬之が尋ねる間もなく、畳みかけられた言葉だった。 「いや、待ちなさい。幸樹とは初めて会ったばかりなのに、そんな一大事は決められない」  父の言葉に、今度は翔が重ねて来た。 「お父様、さっき幸樹くんにおっしゃいましたよね。これからは、今までの分たくさん我がままを言ってくれ、って」  四方八方から攻め込まれ、敬之は困ってしまった。  だが、玄馬を試す言葉は、まだ持っていた。 「九丈さん。もし私が反対したら、どうなさいますか?」 「それでも私が幸樹を愛し続けることに、変わりはありません」  結婚はできなくても、生涯をかけて愛し抜く。  それが、玄馬の答えだった。

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