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第十九章・3
「翔さん、結婚するんですか!?」
「うん。そこに立ってる、黒岩と」
一時は、玄馬に求婚したという翔。
いつの間に、そんなめでたいことになったやら!?
「幸樹くんに、嫌な思いをさせたよね。ごめん。でも、九丈さんのおかげで円く収まったから」
にこやかな翔が、今度はうらやましくなった幸樹だ。
(いいなぁ。僕も、玄馬さんとの結婚、許してもらいたいな)
それは、父・敬之と、遠山の出方にかかっている。
でも……。
『それでも私が幸樹を愛し続けることに、変わりはありません』
こんな、熱い言葉を贈ってくれた。
幸樹は、そのことが無性に嬉しかった。
「玄馬さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
「どういたしまして?」
何にお礼を言われたか、解らない玄馬だった。
それほどこの言葉は、彼にとって身に着いたものになっていた。
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