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第ニ十章・2
「まずは、遠山さん。これまで幸樹を、そして奈津美を支えてくださって、心からお礼を申し上げます」
「いえ。私は当然のことをしたまでです」
カフェの常連だった、母子。
いつしか遠山は、その母に思慕を抱くようになった。
「私の片思い、だったんですがね。それでも、あなたに会えて良かった」
愛する女性が、生涯を通して愛した男。
遠山が、気にならないわけがなかった。
「私より、男前。私より、お金持ち。そして、私より権力者」
これでは到底、かないっこない。
そんな風に、遠山は笑った。
だが、敬之は静かに首を横に振った。
「奈津美に、最後に会った時のことを、教えてもらえませんか」
「いつものように、カフェに幸樹くんと見えました」
遠い日を見るような目で、遠山は手にしたコーヒーカップを眺めた。
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