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第ニ十章・5
「いや、きっと奈津美さんは、あなたのことを見てくれていたと思いますよ」
「遠山さん」
「最後の最後に、会いに来てくれた。それで彼女も、浮かばれた」
私はそう思います。
遠山の言葉に、敬之は救われる思いだった。
「さて!」
ぱん、と両手を合わせて、遠山は場の空気を変えた。
「奈津美さんの思い出は、またゆっくり後ほど。今度は、幸樹くんのことですが」
話によると、と遠山は聞き入っていた玄馬をじろりと横目で睨んだ。
「ここにいる九丈さんが、私の知らないところで幸樹くんにプロポーズしたらしいのですが!」
「す、すみません」
玄馬は、肩をすくめた。
だが遠山に向けても、はっきりと幸樹に対する愛情を口にした。
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