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第ニ十章・7
玄馬は、下げた頭を上げ、続けた。
「今手掛けている仕事は、最後までやり遂げるつもりです。ですが」
ですが。
「ですが、それが無事に済めば、組幹部に頭の座を譲り、私は足を洗っても構わない」
それには、敬之が静かに言った。
「九丈さん。全てを失ってもいい、とおっしゃるんですね?」
「全てではありません。幸樹が残ります」
そして、それさえ残れば、私はもう何もいらない。
玄馬の覚悟は、二人の父親の心を揺さぶった。
「いいでしょう。私は、九丈さんと幸樹の結婚を許します」
「泉田さん」
「そこまで考えているのならば、幸樹くんを幸せにできるだろう」
「遠山さん」
あなたには、負けたよ。
遠山は、玄馬に手を差し伸べた。
「結婚を、認めよう」
ありがとうございます、と玄馬と幸樹は声をそろえた。
玄馬の手が、遠山の手と固い握手を交わす。
幸せの第一歩が、ようやく踏み出せた。
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