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第5話
「おーい、宗也!起きないのか?休むなら休むで何か言え!」
翌朝、いつもは遅刻寸前の律が既に支度を終えている横で、いつもは一番早く起きている宗也がベッドでタオルケットを頭から被ったままで出てこようとしない。
その少し出ている頭をぽんぽんと叩いたり、体の上に乗っかったりして志貴が起こそうとするが、宗也はグッとタオルケットを掴んだままで全く反応を示さない。
「志貴さん、そんな風にしたら宗也が起きられませんよ?」
そう言って律が志貴の体を宗也のベッドから下ろすと、その端に静かに腰をかけた。
「宗也、昨夜のことがショックなのはわかるよ?だから休むなら休んでもいいけれど、先生に言わなきゃいけないから、どうしたいのか教えてくれないかな?」
「…みます。」
小さくつぶやく声が聞こえた。
「ん?宗也、何て言ったの?」
律の耳がタオルケットに近づく。その頭を抱え込むように、タオルケットの中から宗也の腕が伸びた。
「休みます…それと僕と一緒に休んでください。律先輩…ダメですか?」
「バカなこと言ってんじゃねぇよ!お前が勝手に休むのはいいけれど、律を巻き込むな!」
宗也の腕を律の頭から離そうと志貴の手が伸びるのを律の手が止めた。
「それで、宗也の気が晴れるなら俺の今日を宗也にあげるよ。志貴さん、先生にはうまくお願いします。」
「まったく、仕方ねぇなぁ。宗也、律を困らせるんじゃねぇぞ!律も、宗也をあまり甘やかすな…ったく!おい、律の頭から手を退けろ!」
ぐいっと無理矢理に宗也の手を引き剥がすと、タオルケットの中からじっと見つめる宗也の目と志貴の目が合った。
瞬間、志貴の目がニヤリと笑い、宗也の目と合わせたままの志貴の顔が律の顔に近付き、二人の唇が合わさる。志貴の指が律の顎に指をかけてそれに力を込めると、律の口がほんの少し開いた。
「ん…」
ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて二人の舌が絡まっているのが宗也にも見て取れた。
まるで律は自分のモノだとでも言うようなキスを見せつけてくる志貴に、宗也がタオルケットの中で歯軋りする。
「んん…志貴…さん…もう…んっ…時間…はぁ…」
律の声に志貴と律の顔が離れるが、最後までくっついたままの舌に志貴が再び食いつく。
「んぁっ!し…志貴さ…ん…」
かくんと膝から崩れ落ちる律の体を肩に抱き寄せ、その耳に囁く。
「俺も休もうかな?」
「ダメっ!志貴先輩は、さっさと学校に行って下さい!」
その声が耳に届いた宗也が焦ったようにタオルケットの中から出てくると、呆然としている志貴に鞄を押し付け、ぐいぐいと背中を押して、部屋の外に出した。
「おいおい。宗也、帰ったら覚えておけよ!」
扉に向かって吠えると、志貴が廊下をつまらなさそうに歩き出す。
扉のこちら側では肩で息をする宗也と、今だに状況が飲み込めないままでいる律の二人が部屋に残された。
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