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第6話

「…それで?」 志貴を追い出して扉を閉めた宗也をベッドの上に座って眺めながら、律が尋ねる。 「宗也は俺と二人きりで何がしたいのかな?」 ふふっと笑いながら律が制服を脱ぎ出す。それを見て、宗也が律に背中を向けた。 「な…何をしているんですか?!」 驚きと焦りの声を上げる宗也に、キョトンとした目を向けた律が吹き出すように笑い出した。 「ただの着替えだよ!休むのに制服着ていても仕方ないだろう?宗也を襲うなんてことしないから大丈夫だよ!」 笑いながらトランクス一枚になった律が自分の机にかけてある服に手を伸ばす。 「僕じゃ…ダメですか?僕は対象にはならないんですか?」 宗也が律の方に振り向き声を上げた。その言葉に服にかけた律の手が止まる。 一瞬の間を置いて、律がそのままの格好で宗也の方に向かって歩き出した。 それを見て、宗也が後ずさるもすぐに背中が壁にぶつかる。近付く律から視線を逸らすことも出来ず、じっと立ちすくんだままでいる宗也の頭を律の手が覆うとそれにビクッと反応した宗也に、律がその頭を優しく撫でた。 「俺の事、志貴さんが話しただろう?俺にはあんまり性欲ってもんがないんだ。だから志貴さんにああやって弄られてようやく志貴さんを満足させられる。だから俺の欲を宗也に使っちゃったら、志貴さんを満足させられなくなっちゃうと思うんだよなぁ。だからさ、宗也を対象には出来ないんだ。」 そう言うとごめんなと言って手を離した。 しかし、その手を宗也が掴み無言でベッドに連れて行くと、どさっと仰向けにした律の上に跨った。 「宗也?」 律が顔色を変えずに宗也を見つめる。 「宗也、どいてくれないかな?…あぁ、無理みたいだね。でも俺はやっぱり宗也を満足させられないと思うんだよね…って、聞いてる?」 黙ったままで律の言葉を聞いていた宗也が、黙ったままで自分の服を脱ぎ出す。 「僕で律先輩が満足してくれるようにすれば、問題はないって事ですよね?僕を試して下さい…それで、僕が律先輩の事を満足させられたら、僕のことを対象として考えて下さい。」 「ちょっと待ってって!俺はヤる気ないって言ってるだろう!?宗也、やめろ!!」 先程までの温和な空気もはねのけるように律の腕が宗也の体を突っぱねる。 「あぁ、先輩もそう言う顔できるんですね…でも、ここまできて今更ダメとか…無理ですよ、もう。」 「宗也!!いい加減に退けって!!おい!!」 律が上半身を起こすようにしながら宗也を退かそうとするが、びくともしない。 ぺろっと唇を舐める宗也を見て、それまでは表情を変えることのなかった律の顔がさーっと青ざめる。 「ほ…んき…なのか?」 震える声で絞るように出した律の言葉に、宗也がくすっと笑った。 「僕も昨日からずっと考えていたんです。でも、考えれば考えるほど律先輩の甘い声が頭の中でぐるぐるして、身体も反応して…だから僕に教えて下さい。この熱が冷める方法を…ねぇ、先輩。」 「やぁああああああ!!」 覆い被さり近付いて来る宗也に、体は動かず、ただ目を見張るだけの律の口から悲鳴が突いて出た。

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