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第7話

突如バタンと扉が開いて黙ったままで志貴が部屋に駆け込んで来ると、呆然と律の上に跨ったまま動けずにいる宗也に大股で近付き、驚きのあまりなのか口をぽかんと開けた顔で自分を見上げている宗也の腕を力任せに掴んでベッドの下に引き摺り下ろした。 「どうして…どうして志貴先輩がいるんですか?」 不恰好に床の上に座り込んだ宗也が気がついたように頭を振って体を起こすと、志貴に向かって大声を上げる。 「なんとなくイヤーな予感がしたんだよ。ったく、全裸で律の上に跨るとは…いい度胸してんじゃねぇか!?律、お前が甘やかすからこうなるんだ。少しは反省しろ。」 そう言って膝の上に抱き寄せた律の頭をその言葉とは裏腹に優しく撫でると、それまで何の反応も示さなかった律が志貴の顔を見て突然ポロポロと涙をこぼした。 「もう、大丈夫だよ…律。」 そう言いながら、優しく微笑んで顔を覗き込むと指で涙を拭う。 まるでそれが合図だったかのように、律が志貴の胸に顔を埋めて泣きじゃくるのをよしよしと頭を撫でながら、にやける口元を隠しもせずに宗也に向かって視線を合わせる。 お前の出る幕なんかねぇよ そんな風に言われているように宗也には思われ、悔しさと全裸でそんな二人を見ながらも萎えることなく天を仰ぐ自分に居た堪れない気持ちになる。それを見ていた志貴がため息をつくと律に向かって話し出した。 「…だけどなぁ、律。これでも俺はちょこっとばかり怒っているし、宗也の今の状況にも同情はしてるんだよなぁ…それに、今はこの寮には俺達だけっていうのさ…ちょっといいシチュじゃね?」 そう言って宗也になぁと同意を求める志貴に、どう返事をしたらいいのか分からず、志貴の意図も見えずで宗也はただじっとその考えの分かる一欠片でもないかと志貴の顔を凝視する。 そうやって自分の顔ばかりを見つめるだけで何の返事もない宗也から視線を外して今度は律のと合わせる。 「なぁ、律…お前なら分かるよな?俺が今、何をやりたいのか…なぁ?」 そう志貴に尋ねられ、どの程度の事を考えているのかまでは分からないが、志貴と何年も同室でこのような行為をずっとし続けてきた律には、何となくだが志貴のやりたい事が予想はつく。かと言って、分かると頷けばその行為を受け入れなければならず、かと言って分からないと首を横に振れば無理矢理に志貴にその行為をさせられる。そう言う人だと律は身体で知っていた。 「多分、分かります…でも俺…っ!」 分かるけれどしたくはないと答えようとした律の言葉を遮るように志貴が口を開いた。 「でも、はいらないよな?俺は分かるかって聞いただけなんだし…律、考えすぎて墓穴。」 そう言ってニヤッと笑う志貴に律の顔が凍りつき、ぬーっと自分に向かって伸びてくる手から逃げようと身を捩った。 瞬間、志貴の声が宗也に向かって飛んだ。 「宗也!律の身体を押さえろ!」 え?!と聞き返す間も与えられない程の志貴の迫力に宗也の体が反射的に立ち上がり、身を捩っている律の上半身側からベッドの上に上がると嫌がる肩を両手で掴み、ベッドに押し付ける。 「志貴…さん、助けてくれるん…じゃ…?!」 そうやって身体の自由を奪われた律の絶望的な声に志貴の顔が破顔した。 「だからまずは助けてやっただろう?ここからは律へのお仕置きと宗也への同情タイムってところかな?宗也はお前の可愛い後輩であると同じように俺にとっても可愛い後輩だからな。そんな後輩があられもない姿を晒してまでお前に告白したんだろ?そう考えると可哀想だよなぁって、心優しい先輩としては思っちゃったわけだよ…だからさ、願い叶えてやりたくなっちゃった…律、お前だってそう思うだろう?」 律と宗也が目を見開いて同時に志貴を見る。しかし、律と宗也の表情はまったく逆だった。 「いいんですか?本当に、いいんですか?」 宗也が狂喜するように志貴に詰め寄り捲し立てる。 「やだ!嫌だって!志貴さん、やめて下さい!やだぁあああああ!」 律は先程の宗也に迫られた時よりも青ざめた顔でぶんぶんと頭を横に振って悲鳴を上げた。 そうやって二人の表情の違いを面白がるように見ていた志貴が、震える律の身体に顔を近付けて舌を這わせる。びくんと跳ねる律の身体を両手で弄りながら、上目遣いで律に語りかけた。 「律は、可愛い後輩思いの優しい先輩だもんなぁ?宗也がこんなにも必死でいるのを見たら、そりゃあ無下にはできないだろう?大丈夫だよ、俺もこうやって一緒にしてやるからさ。宗也と俺でお前を最高に気持ちよくしてやるよ…律。」 一瞬しんと静まり返った部屋で、志貴と宗也の顔を交互に見た律が再び悲鳴を上げた。

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