15 / 18
第15話
「志貴先輩…上げないよ?」
宗也のゆっくりと静かな声が志貴の耳に届いた瞬間、志貴が体をビクッと跳ねさせて、宗也の顔を見る。
同じように宗也の顔を見たが、いつもと変わらない微笑みに律には見えた。
しかし志貴は宗也に涙を流して訴え始めた。
「宗也ぁ…ごめ…っなさい…怒らない…でよぉ…宗也ぁ…」
ひっくひっくと肩を揺らして子供のように泣く志貴に、もう今日は何度驚きの表情をしたか分からない律が、またも驚愕する。
「宗也…志貴先輩に何をしたんだ?!こんな風に志貴先輩が泣くなんて…」
「おかしい…ですか?」
返答によっては、お前をこの部屋から追放するとでも言いそうな雰囲気で律が頷く。
もう、この部屋の主は僕だって分かっていないんだよなぁ。
律のそんな顔を見て、宗也の心に服従という言葉が浮かぶ。
…まずは志貴先輩か。
それを奥にやると、志貴に近付く。
「宗也!志貴さんに近付くな!」
律が声を上げるが、志貴がそれを自分の中を絞る事で止めさせる。
「くぅっ!志貴…さん?」
「律、俺はもう宗也のモノなんだから、俺が何をされても黙ってて!俺は宗也にたくさん褒められたいんだ…だから、怒っちゃ…やだよぉ…宗也ぁ、ごめんなさい…」
そう言ってまたも志貴が泣き出す。
それを見て律が、この部屋の主が既に宗也になっていた事に気が付いた。
「志貴先輩、僕の出る幕を取っちゃった!」
そう言って志貴の頭を撫でる。
それだけで志貴は笑顔を取り戻し、宗也ぁと甘い声を出してその手に自らも頭を擦り付ける。
「猫みたいですね?志貴先輩は…ふふ、可愛いなぁ。」
宗也の言葉に怒られないと思った志貴が、甘え出す。
「ご褒美ぃ…宗也のを俺に頂戴?ねぇ、ご褒美頂戴?」
そう言って腰を揺らす志貴に、中に入ったままの律のが刺激を受け、出せない痛みに顔を歪ませる。
「猫はしゃべらないんだけどなぁ?」
宗也の言葉に志貴がはっとして宗也を見上げる。
「猫なのに喋るって、おかしいよなぁ?志貴猫は何で喋れちゃうのかなぁ?」
面白そうに志貴の鼻を掴んでぐにぐにと弄っていた宗也が、その指を志貴の口に入れて、中をグチュグチュと掻き回す。
「ここから出るのは鳴き声だけのはず、なんだけどなぁ?」
そう言って指を出すと、とろんとした目が追いかけてくる。
「おねだりは?」
宗也の言葉に志貴の喉がごくんと動き、口が震える。
しかし、大きく息を吸った志貴がついに宗也の言葉に完全に従った瞬間が来た。
「にゃ…にゃーん!にゃ、にゃん。にゃーん!」
「よしよし…志貴猫は本当に可愛いなぁ…いいよ、ご褒美あげる。」
そう言って、律のが出ないようにその肩を掴むと、式の腕を引き抜いた。
「にゃ…にゃーーーーーーーー!」
「ひぃぁあああああああああっ!」
二人の出した叫び声に、宗也は嬉しそうに唇を舌で舐めた。
ともだちにシェアしよう!