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第7話
鮎原君の想いを知り、自分の想いも鮎原君に知ってもらえた。
初めて人を愛する事の尊さを知る事が出来たけれど、そんな幸せは一時の事だった。
鮎原君と僕に、遂に出撃の命令が下る。
奇しくも同じ日、一緒に南方へ向かい、敵艦に特攻する事になった。
僕は命を受けた後、上官に抱かれて最期に何か願いはないかと聞かれたので、鮎原君とふたりで過ごす場所と時間が欲しいと答えた。
上官は不満そうな顔をしながらも僕の願いを聞き届けてくれて、鮎原君と僕をふたりにしてくれた。
「岩浪君」
飛び立っていった者たちが増え、空きが出来た寝所にふたりで布団を並べた。
月明かりの差し込む、綺麗な夜だった。
「ん……」
僕を見るその瞳は、今まで見たことのない輝きを放っているように見えた。
「……これ、君に贈るよ。君への気持ちに気づいた時、実家に頼んで作ってもらったんだ」
そう言って、鮎原君は胸ポケットからしおりのようなものを手渡してくれる。
「ありがとう……」
それには、クワの花が押し花にされて付いていた。
その花言葉は、
『共に死のう』。
鮎原君は最期に、僕に最高の贈り物をくれたんだ。
「ごめんね、僕は何も用意していなかったよ」
「気にしないで。君は俺にこうしてふたりだけで過ごせる最期の時間を用意してくれた。俺にとって、何よりの贈り物だ」
その逞しい身体が僕を抱き締める。
「君に出逢えて本当に良かった」
「……僕もそう思っているよ、鮎原君」
互いの顔を手で触れて、そのまま唇を重ねた。
今夜で全てが最期。
その事実が、今までにないくらい身体を熱くさせる。
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