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第11話《異世界にて》
気がつくと、僕の目の前には見知らぬ木の天井があった。
「うぅ……っ……」
起きようとしても身体が動かない。
「夜までは動かせないぞ」
低い男の声がすぐ側から聞こえた。
「だ……誰……?」
足音が近づいてきて、僕の顔を覗き込む。
褐色の肌に銀色の短い髪。
右頬に螺旋状の赤い刺青をしたがっしりとした体躯の男が、眉がなく濃い青色の大きな瞳で僕を見ていた。
「俺はユープ。ローツ解放軍オランイェ隊隊長を務める者だ」
「え……??」
聞いた事のない名前が連続して出てきて僕は驚く。
ここは米国でも英国でも無さそうだ。
「お前こそ何者だ。あんな場所にぼろぼろの姿で倒れていたが、一体どこから来た?」
「あんな……場所……?」
「お前はこの近くの森の中でこの刀を持ち、あちこちの骨が折れている状態で倒れていた。ここに住む者ならば、あの森はズワルツの仕掛けた罠が張り巡らされている可能性が高い事を知っている。お前は他所から来たのだろう?」
僕が軍服のベルトに引っ掛けて持っていた短刀。
男はそれを僕の枕元に置いてくれた。
……そうだ、しおり。
僕は慌てて胸元のポケットを探ろうと手を動かそうとした。
右手は動かせなかったけど、左手は痛みがあるもののなんとか動かせる。
……あった。
少しぐしゃぐしゃになってしまったけれど、これだけは絶対に手放せない。
「怪しい者では無さそうだが、その素性を話さなければ回復次第牢に入る事になるぞ」
「そんな……待って下さい。僕は大日本帝国海軍神風特別攻撃隊第五華風123部隊隊員の岩浪純一です」
慌てて僕が肩書きと名前を名乗ると、ユープと名乗った男は不思議そうな顔をした。
「……聞いた事のない国だな」
「僕も貴方の国の名前を聞いた事がありません」
そこに、ドアを開ける音が聞こえる。
「ユープ、彼女は目覚めましたカ?」
「……あぁ。だが話がまったく噛み合わない。少なくともズワルツの人間ではなさそうだが……」
「もしかしたら、私たちの世界とは異なる世界から来たのかもしれませんネ」
彼女?
ひょっとして僕の事?
それに異なる世界って?
何が何だか分からずにいると、メガネをかけた金髪の長い髪の男が笑顔で僕の顔を覗き込んでくる。
「おはようございマス。夜になれば骨がくっつきますのでそれまで辛抱して下サイネ」
「あ……貴方は……」
「私?私はロブレヒト、ローツ解放軍の軍医デス。キミは?」
「僕は……」
ユープという男に言ったのと同じ事をもう一度言って自己紹介してみる。
「んー、間違いないデス。ユープ、彼女は私たちの世界とは異なる世界の人間デスネ」
「あ、あの、僕、これでも男なんですけど……」
「これは失礼シマシタ。ですが……私たちの世界ではキミは彼女と呼ばれる容姿なのですヨ」
「……はぁ……」
終始笑顔のロブレヒトと名乗る男。
なんだか気味が悪かった。
「キミの世界の事、興味深いデス。聞かせてもらえますカ?キミが生まれ育った国はどのような国なのか、今どのような状況だったのか、もしかしたら、そこに私たちの世界に来てしまった理由があるかもしれまセン」
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