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第13話

ロブレヒトさんがくれた薬で眠ってしまった僕は、その後彼に起こされていた。 「もう大丈夫デス。着替えも用意しましたので、それに着替えて下サイ」 「ありがとうございます……」 何の違和感もなく身体が動かせる。 骨が折れていたはずなのに。 「…………」 用意された襟がなく、丈の長い生成の服に茶色のズボンに着替え、腰紐に刀を落ちないように挟み、ズボンのポケットにしおりをしまう。 身体中に残る、鮎原君に愛された証。 それを見ると胸が痛んだ。 「よく似合っていますヨ」 僕よりもずっと背の高いロブレヒトさんは、僕を見下ろすように見ていた。 「……ユープさんは……?」 辺りを見回すと、その姿がなくなっている。 「ユープは外で見廻りをしていますヨ。さぁ、イベリス様がお待ちですので参りまショウ」 「……はい……」 ロブレヒトさんに案内されて隊長の執務室のような場所に向かうと、そこには見覚えのある顔をした、けれど明らかに背の高さと瞳の色が違う男がいた。 「イベリス様、例の者を連れて来ました」 「あぁ、ご苦労さま、ロブレヒト。下がっていい」 (……鷹島……君……) 背がもう少し低かったら。 その黒髪がもっと短かったら。 その緑色の瞳が黒かったら。 その肌の色がもう少し日に焼けていたら。 僕は目の前にいるこの男を鷹島君だと思っただろう。 ロブレヒトさんがいなくなると、イベリスと呼ばれた男は僕に近づいて来た。 「……美しい。まるで陶器で出来た人形の様だ……」 「…………!!」 僕を見て、頬に触れてくる手。 よく知っている感触だった。 その聞き覚えのある声に、僕の背筋は凍りつく。 けれど、僕はその手に抗う事が出来なかった。 「驚かせてしまった様だな、済まない」 申し訳なさそうにしながらもその手を離したくないような素振り。 鷹島君にそっくりだった。 「異国の美しき者よ、そなたの名は?」 「……ジュンと申します……」 僕はロブレヒトさんにつけてもらった名前を言った。 「そうか。私はイベリス、ロブレヒトより聞いているかもしれんが、ここズワルツ王国領ローツの領主だ。我らの味方となってくれるという申し出、心より感謝する」 イベリスさんは頬から移動させた手で僕の手を取ると、その甲に接吻する。 「ジュン、食事は済ませたのか?」 「いえ……」 「ならば俺と共に食事をとろう。ついて来い」 少し強引に手を引かれ、僕はイベリスさんの後に続いた。

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