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第16話
翌日。
ユープさんは僕を迎えに来てくれて、一緒に朝食をとった。
それから武器の保管場所に向かい、そこで銃を受け取ると、僕は銃を練習する場所に連れて来られていた。
訓練の時に使っていたのと似ている銃だったから、やり方を聞いてすぐに打つ事が出来、命中させる事が出来た。
「……やるな。万が一の事があってもこれならすぐに戦える」
「あ……ありがとうございます……」
それからユープさんは僕を砦の外に連れて行ってくれた。
程よい日差しと心地良い風。
歩いていても暑さを感じない、過ごしやすい天気だった。
「ここだ」
「わぁ……!」
ユープさんが案内してくれたのは、広い湖のある場所だった。
湖には蓮と睡蓮が咲き、湖の向こう側にも花が咲いていた。
「綺麗……それにいい香りもして……」
僕はその場に立ち尽くし、鮎原君の事を思い出す。
鮎原君がこの景色を見たら、何と言ってくれるだろうか。
きっと、一緒に綺麗だねって言って笑ってくれただろう。
けれど、鮎原君は……。
「…………」
僕はポケットからしおりを取り出すと、それを胸に当てて泣いた。
……あぁ、そうだ。
この湖に飛び込めば、もしかしたら鮎原君のところに逝けるかもしれない。
そう思った僕は、持っていた銃を置くと、湖に向かって走り出していた。
「待て!!」
飛び込もうとした僕を、ユープさんが強い力で捕まえる。
「お願いします、死なせてください。鮎原君の傍に逝かせて……」
振りほどこうとした僕は、ユープさんに頬を叩かれていた。
「落ち着くんだ」
「うう……っ……」
叩かれた場所がじんと痛む。
その低い声は、僕を宥める様だった。
「……お前に何があったかは知らんが、ロブレヒトが救ってくれた命を粗末にするな」
「……それは……確かに申し訳ないですけど……でも、元々死ぬ筈だった僕の命なんてどうでもいい命なんです」
僕は泣きながら言った。
「この世界に、ここに来た以上、勝手に死なれては困る。お前が花が見たいのならば他にも咲いている安全な場所を知っているからいくらでも連れて行ける。だから死のうとするのだけはやめてくれ」
「ユープさん……」
その大きな身体が僕を抱き締めてくる。
厚い胸板から聞こえる鼓動。
それが僕の心を次第に落ち着かせてくれた。
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