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第19話《どこにいても》
それから。
僕の毎日は日が沈むまではユープさんと共に見廻りに行き、夜は自室で外を眺める……というのが常になっていた。
その中で武力衝突もあり、僕も銃を使って戦った。
敵の陣地に忍び込み、敵将を狙って撃つ。
ユープさんに指示された通りに動き、それを実行する僕は、いつしか解放軍の名狙撃手という事になってしまっていた。
「お前のお陰で無益な血が流れずに済むようになった。これは我が軍にとってとても大きな事だ」
「……ありがとうございます……」
独立の為に戦う。
そうしているうちにいつか死ぬ事が出来て、鮎原君に逢える日が来る。
死ぬ事なんて怖くない。
だからこそ僕は最前線まで入ってゆけた。
そんな僕を、ユープさんは何かと気にかけてくれていた。
『お前は死が訪れるのを待っているんだな』
口数の少ないユープさんが話す言葉はいつも、僕の心に響いていた。
「……えぇ……」
今日も夜戦の後、ふたりで月下香が咲いているのを見つけて眺めているとそんな事を言われて、僕はそれに嘘もごまかしもしなかった。
『俺はそんな風に思えるお前を軍人として尊敬する反面、俺には到底出来ない事だと思ってしまう』
「尊敬なんてとんでもない事です。それに貴方は隊長を務めておられるのですから、死んではいけません」
ユープさんは夜戦の時に限って、狼の姿でも僕を傍にいさせてくれるようになった。
『……あぁ、だからこそ俺は死ぬ訳にはいかぬと思っている。俺を信じ、ついてきてくれている者たちを導く為に』
そう話す、ユープさんはとても気高く美しく見えた。
月の光に照らされた姿。
ユープさん自身はこの姿を良く思っていない様だけど。
「ユープさんには月の光が似合うと思います」
『まさか。この姿は醜い獣でしかないだろう』
「僕はそうは思いません。月の光を浴びている夜の貴方はその心のように崇高で美しいです」
『……そのように言われたのは初めてだ』
僕の言葉に、ユープさんは嬉しそうな顔をしてくれたように見えた。
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