21 / 50
第21話
「この戦いの間だけで構わない。俺の妾になって欲しい」
夜通し僕を求めて犯し続けた果てに、イベリスさんは言った。
「僕から軍人という身分を奪わなければ貴方様のお望み通りにします……」
戦場に行かず、ここにずっと留まるような妾にだけはなりたくなくて、僕は言った。
「あぁ、分かった。約束する」
朝日が登り始めていた。
僕はひとりになりたくて、見廻りに行くとイベリスさんに話し、外へ出ていた。
「…………」
この前見つけた朝顔に似た花が沢山咲いている場所に向かう。
朝日と共に開いていく花たちの可憐な美しさ。
僕もこんな風になれたらどんなに幸せだろう。
「ジュン」
そう思っていると、ユープさんの声が背後から聞こえてくる。
「……おはようございます、ユープさん」
「顔色が悪いが、大丈夫なのか?」
僕が応えると、ユープさんは隣に座り、尋ねてきた。
「大丈夫です、昨夜眠れなかっただけなので……」
「そうか。ならばここで少し休むといい」
それだけ言って、ユープさんは花たちを見ていた。
「……じゃあ、少しだけ……」
僕は目を閉じると、そのまま眠ってしまっていた。
どこからか漂ってくる花の香りが心地良かったからだ。
そんな僕の隣に、ユープさんはただ黙って傍にいてくれた。
ともだちにシェアしよう!