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第22話《哀しみと共に訪れたのは》

それから。 夜の見廻りや夜戦がない夜の僕はイベリスさんの相手をする事になった。 ほぼ行動を共にしていたユープさんにはイベリスさんに呼ばれているとだけしか言えなかったけれど、僕がイベリスさんの妾になっているという話はみんなが知る事実になっていたから、きっとユープさんも僕とイベリスさんの関係を知っているはずだ。 そんな日々の中、僕は砦を取り返しに来たズワルツ軍と交戦中、腹部に流れ弾を受けてしまった。 命に別状はなかったものの、出血が酷かったので戦線を離脱し、手当てを受ける事になった。 「ジュン様、今弾を抜きますからね。少し痛いですけど、我慢して下さい」 「あ……ありがとうございます……」 アリーさんが処置にあたってくれて、僕の服を脱がす。 「あ……!!」 すると、アリーさんが動きを止めた。 「ロブレヒトさま!早く、早く来て下さい!!」 真っ青な顔をしてロブレヒトさんを呼びに行くアリーさん。 僕は何が起こったのか分からなかった。 「……これは……」 ロブレヒトさんが僕のお腹を見て、複雑な表情を浮かべる。 「助けられませんか?」 「……えぇ、もう死んでいますからネ。とりあえず取り出さなければいけまセン」 「……分かりました……」 死んでいる? 何が? 僕は訳が分からなくてただ泣いているアリーさんを見ていた。 「ジュン、恐らく前の世界にいた時に受精した可能性が高いのですが、キミのお腹に胎児がいまシタ。残念ながらこの流れ弾が原因で死んでしまい、今から取り出しマス」 「え……そんな……まさか……」 僕のお腹に胎児? 妊娠していたって事? 信じられなかった。 「この世界ではキミのような身体の者は子供を授かる事が出来マス。そして、妊娠した者にはその印として腹部に植物の模様が浮かんでくるのデス。……気づきませんでしたカ?」 そう言って、ロブレヒトさんは鏡で僕に腹部を見せてくる。 「…………!!」 そこに映ったのは、クワの花と葉の形が薄らと浮かぶ僕のお腹。 『君に出逢えて本当に良かった』 『愛してる……誰よりも君を……愛してる……』 あの時の、最期に愛し合った時の鮎原君の声が、姿が、僕の頭の中にハッキリと浮かぶ。 お腹の中を無理矢理引っ張られる痛みと、鮎原君との間に生命が生まれていた事も知らずに死なせてしまった事への悲しみで、僕は泣き叫んでいた。

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