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第23話
ロブレヒトさんは僕に、小さな小さな胎児を見せてくれた。
その子のお腹には、銃弾が刺さっていた。
「この子がキミを救ってくれマシタ。キミが愛した人に代わって」
「うぅ……っ……」
「明日には傷も癒え、お腹の模様も消えまショウ。どうか気を落とさず、この子の分まで精一杯生きて下サイ。それがこの子の為にキミが出来る事だと私は思いマス」
感染症の危険があるという事で、僕は砦の中にあった牢屋のような場所に隔離された。
「鮎原君……ごめんね、ごめんなさい……」
アリーさんが傍に置いてくれた僕のしおりと刀。
僕はしおりを胸の上に載せ、声を上げて泣いた。
謝っても、その声が届く事がない事など分かっていた。
けれど、叶うなら鮎原君との子供を産んでみたかった。
ひとりでも育ててみたかった。
「ジュン」
一晩中泣いていた僕のところに、ユープさんは朝の見廻りに行くと言って現れた。
「おはよう……ございます……」
いつもと変わりなく接してくれるユープさん。
「動けるか?」
「……はい……」
身体はすっかり元通りになっていて、痛むのは心だけだった。
「……無理はするな。休みたいのならば休んでもいいぞ」
「大丈夫です。むしろ外へ出た方が……」
早く死ねるかもしれない。
その言葉を僕は呑み込んだ。
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