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第26話

翌朝。 まだ日が登らないうちに、僕は外に出て昨日の待雪草に似た花が咲いている場所に向かった。 そこに行けばユープさんに会える気がしたからだ。 花が咲いているのを見渡せる丘の大きな樹の下で、ユープさんは狼の姿で眠っていた。 「ユープさん……」 僕はその傍に寄り添っていた。 綺麗な白銀の毛並みを撫でると、手にはその温もりが感じられる。 抱き締められた時とは違う心地良さは、僕の心を穏やかなものにしてくれた。 『……ジュンか……』 「ごめんなさい、起こしてしまいましたよね」 『気にするな。お前の手が心地良くてまた眠ってしまいそうだ』 そう言うと、ユープさんが僕に鼻を擦り寄せてくる。 「僕も……ユープさんがあったかくて眠ってしまいそうです」 その鼻に、僕は顔を近づけていた。 『……このまま少しだけ休もうか』 「はい……」 日が登るまでの間、僕はユープさんとそんな穏やかな時を過ごす事が出来た。 気がついた時、ユープさんは人間の姿になっていた。 僕を抱き締めながら眠っているその寝顔を見ていると、愛おしさが募ってくる。 僕の過去も今の現状も一切何も言わず受け止めてくれて、死に急ぐ僕を生かそうとしてくれるユープさん。 この人の為に生きたい。 そう思ってしまった。

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