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第27話

ユープさんと一緒に砦に戻り、朝食をとる。 それから水浴びをしに行くというユープさんに、僕はついていく事にした。 「ここは領土内であり、軍の者たちも利用している場所だから安全だ」 そこは、水というよりは温水で、お風呂に入っているような感じだった。 「すごく気持ちいいですね」 こうして全身をゆっくりお湯に浸からせたのはいつぶりだろう。 思い出せないくらい昔の気がした。 「気に入ってもらえて良かった」 隣にいるユープさん。 その逞しい身体には幾つもの傷があり、この人はずっと戦い続けているんだという思いと同時に、そこから放たれる艶かしさに、僕の胸は高鳴ってしまっていた。 「……今夜は共に見廻りに行けるか?」 ユープさんの方を見ないようにしてお湯に浸かっていると、背後から抱き締められる。 「ごめんなさい、今日はイベリスさんに呼ばれていて……」 「そうか……」 僕をきつく抱き締めてくるユープさんの方を見ると、すぐ傍にその顔があった。 「ん……ッ……」 頭を撫でられながら口付けをされる。 何度も何度も繰り返されると、その心地良さに声が出てしまった。 「……こんな事をして、お前を傷つけてしまっていないか?」 「そんな事……ありません……」 不安そうな声に、僕は自分からもユープさんに口付けていた。 「ジュン……」 「僕の名前、本当はジュンイチです。だから……貴方にはジュンイチって呼んで欲しいです……」 「……分かった。ならばお前も俺にさんなど付けず、ユープで良い」 見つめ合い、そんな言葉を交わした後、唇を重ねる。 「ジュンイチ、俺は……お前を愛している。花を愛し、花の如く美しく儚く見えるお前が愛おしくてたまらない……」 その低い声で優しく言われて、涙が出てしまった。 「もう、誰も愛さないと思っていました。鮎原君……僕のいた世界で一番大好きだった人以外の人を想う事なんかないって、そう思ってたのに……」 僕はユープの方を向くと、その腕の中に飛び込んでいた。 「愛した人を忘れる必要などない。俺はこうしてお前の傍にいて、その心に触れられるだけで十分だ」 「それは……僕が貴方の全てが欲しいと言っても変わらないんですか……?」 広い背中に手を伸ばし、厚い胸板に顔を埋める。 その鼓動が急に早くなっていくのが聞こえた。 「俺の全ては既にお前のものだ。だが、お前の全てを今すぐ俺に寄越さなくていい」 そう言って、ユープは僕の額に口付ける。 「俺がお前の全てを貰うのは、お前に俺の子を孕んでもいいという覚悟が出来た時だ。その時俺は醜い獣の姿に成り果て、お前を確実に孕ませてしまうが、お前がそれでも構わないと思わぬうちはこれ以上お前に触れたりしない」 「…………」 僕の瞳を見つめながらハッキリと言い切るユープの言葉に、僕は何て言っていいのか分からなかった。 「そんな顔をするな。俺はここに忠義を尽くす戦士の証を刻んでおきながら、イベリス様に背く事になってもお前を生涯愛すると決めた。この想いは決して変わらない」 僕の手をその刺青に導くユープ。 「……かなり話し過ぎたな、済まない……」 「いえ、いつも寡黙な貴方の考えている事を貴方の言葉で聞かせて頂けて嬉しかったです……」 照れくさそうに話すユープが可愛らしくて、僕は笑顔を返していた。

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