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第34話

僕のお腹は、そこだけがはっきり膨らんでいてとても誤魔化せる事が出来なさそうなくらいになっていた。 ユープはイベリスさんに説明するって言ってくれたけど、僕は今後の彼の立場を考えるとそれは最後の手段にすべきだと思い、自分が何とかしてみるから待って欲しいと頼んでいた。 「ジュン、その腹はどうした?先週まではその兆候さえなかったのにどうしてそんなに膨らんでいる?」 夜、見廻りから戻って食堂で会うと、イベリスさんはそう言って僕に迫ってきた。 「……分かりません。見廻りや戦いで外にいる間に多数の者とも関係を持ちましたので、貴方様の子か、関係した誰かの子を知らず知らずのうちに身篭ってしまったのでしょう」 「何だと……!?」 イベリスさんが血相を変えて僕の服を捲る。 「この花は……俺の子ではない……」 「では、他の誰かの子なのでしょう」 驚いているイベリスさんに、僕は終始冷然として話していた。 「……ユープだな。俺以外にお前がよく行動を共にしていた彼奴しか考えられない。おい、誰かユープを連れて来い!!」 「そんな……待って下さい!!」 「うるさい、黙れ!彼奴に聞けば分かる事だ!!」 イベリスさんに見抜かれ、僕は何とか止めようとしたけど叶わなかった。 イベリスさんはその場にいた軍人たちにユープを探させると、皆のいる前で狼の姿のユープに問いつめる。 「ジュンを身篭らせたのはお前だな」 『……申し訳ありません……』 「イベリスさん、ユープは僕に誘われただけです。ユープに罰を与えるというのなら、どうか僕に罰をお与え下さい」 僕は皆の前で土下座させられたユープの隣に並ぶと、同じように、土下座しながら話した。 『ジュンイチ、お前の気持ちはとても嬉しかったが、最初からこうすべきだったんだ。イベリス様、貴方様にお仕えする身でありながら俺はそれを裏切るような行動をしてしまいました。ですが、俺にとってジュンはたったひとり、どんな事があっても愛し続けると心に誓った人です。俺はどうなっても構いませんが、ジュンと子供だけはどうか……』 「フハッ、長年俺に尽くしてきてくれたお前がこのような形で裏切るとは……何という茶番……」 イベリスさんは笑いながらそう言って、土下座している僕の顎を持ち上げる。 「ジュン、お前は俺よりこの獣を選んだのか?俺に見せない顔を、この獣には見せていたというのか?」 「ユープは獣じゃありません。どんな姿でも彼は気高く美しく、僕の全てを受け止めて僕だけを見てくれた人です。僕はそういうユープの傍にいたい、この人の為に生きたいって思ったんです……」 「ジュンイチ……」 僕はイベリスさんに向かって言うと、ユープの身体に寄り添った。

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