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第37話

サンデルの城は、山の頂にあった。 僕は鎧を脱いだサンデルに連れられ、コーバスという医師に身体を診てもらう事になった。 「大丈夫ですよ、サンデル。お母さんは擦り傷を負ってはいますが赤ちゃんたちの方は元気です。この子たちですが、ウォルフ族の子供たちでふたり確認出来ました」 左腕に包帯を巻いた、肩くらいまでの白い髪に褐色の肌をしたコーバス。 黄土色の瞳は、灯りのせいか琥珀の様に輝いているように見えた。 「……何という事だ」 「えぇ、何というご縁でしょう……」 下着以外を脱ぐよう言われていた僕は、そのお腹の花の模様をふたりに見られる。 「ローツ軍にいるウォルフ族と言えばユープ隊長しかおりませんので、彼が赤ちゃんたちのお父さん……という事ですよね。という事はアナタは恐らく我々が恐れるローツの見えない狙撃手……でしょうか……」 「…………」 更に身元まで追求され、僕は無言のまま俯いた。 「ここ1年の間に突然現れ、我らズワルツ軍を後退させたローツの名狙撃手か……」 そんな僕の顔を覗き込み、サンデルは笑って僕のお腹を撫でる。 「安心しろ。お主がそのような者であったとしても、私は決してお主を殺めたりしない。ステア、実は私にもウォルフ族の血が流れているのだ」 「……え……?」 僕は驚いて顔を上げてしまった。 「母上がウォルフ族の血を引いていたものでな。ウォルフ族は希少な種族故に私はその血を絶やさぬようにしたいと思っているのだ」 「そう……ですか……」 だからこの人はユープと同じ髪の色なんだろう。 「アナタは他所から来た様ですね。ウォルフ族の話はローツで生まれ育った者ならば誰もが知っている話ですから」 「そうか、それでステアの事も知らないのだな」 「おや、ステアも知らないとは。わたしたちが知らないような遠い場所から来られたのですね」 敵の筈なのに、ふたりは僕に好意的だった。 「サンデル、ステアという名も偽名なのでしょう?」 「あぁ、名を名乗らぬので私が名付けた。そうだ、身体に問題がなければステアに花を見せようと考えていたのだ」 「……ふふっ、この方がとても気に入ったんですね。問題ありませんから、どうぞごゆっくり」 服を着ると、僕はサンデルと共にコーバスの元を後にした。

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