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第39話

僕は捕虜兼身代わりとしてサンデルの部屋で寝る事になった。 「ステア、よく聞いて欲しい。私は王太子だが、その地位は決して盤石ではなく今も私の命を狙う者がこの城内にもいる。お主には表向きには万が一の時に私の身代わりとして死ぬ為に傍に置いているという事にするが、実際にそんな者が現れたら、お主はこれで自分の、そして私の身を守って欲しい」 そう言って、サンデルは枕元から小さな銃を取り出し、僕に見せた。 ローツ軍の銃と同じく、訓練で何度か使った事のある銃に似ている形だったので、何かあってもすぐに撃てそうだった。 「……分かりました」 「では、休むとしよう」 ふたりで並んで横になってもまだ余裕のあるベッド。 僕は少し離れて眠っていた。 サンデルの寝息が聞こえてきてすぐ、誰かが窓から部屋に入ってくる気配がした。 僕はポケットに隠し持っていた刀をすぐ抜ける状態にして眠っているふりをして様子を見る。 「……!!」 僕に向かって刃を突きつけてくる何者かの姿を避けると、すぐに銃を発砲する音がした。 ベッドに倒れる黒ずくめの男。 シーツがどんどん血で赤く染まっていく。 「早速送り込んでくるとはな。ステア、大丈夫か?」 「は……はい……」 「そうか、お前が無事で何よりだ」 銃を懐にしまうと、サンデルは僕に笑顔を見せて優しく抱き締めてくる。 「何事ですか!?」 そこに、家臣らしい年老いた男たちが数名やってくる。 「……あぁ、五月蝿い虫が入ってきたのだが、この捕虜が退治してくれた」 「何という事だ……」 「殿下、ご無事で何よりです」 「…………」 家臣たちの中には心配してサンデルに声をかける者もいたが、たったひとり、青ざめ方が他の者と異なる男がいるのを僕は見つけた。 「……お主だな……」 「ひぃ…………っ!!」 サンデルも同じ事を思ったのか、瞬時にその男を捕らえてこめかみに銃を突きつける。 「お……お許しください、この捕虜が殿下のお命を狙わないか気がかりでやった事にございます」 「……成程、ステアに罪を着せて私と共に葬ろうとしたのだな……」 その声は僕の知らない、とても低くて冷たい声だった。 「め、滅相もございません。わ、わたくしは……」 「私に不満を持っている事、隙あらば亡きものにしようとしている事、この私が知らないとでも思ったか」 「ぎゃっ!!」 サンデルが銃を撃ち、男はベッドに倒れる。 ベッドは更に赤く染まっていった。 「……この者の土地は全て没収、一族は国外追放とする。お主たちも私に刃を向けたらこうなる事、改めてその心に留めておくんだな」 「は……ははっ……!!」 逃げるようにいなくなる男たち。 僕はそれまでのやり取りを呆然と見る事しか出来なかった。

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