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第40話
「来て早々に済まないな。あの部屋はすぐに修繕させるが、それまではここで我慢してくれ」
「……はい……」
サンデルはすぐ近くの部屋に僕を連れて行ってくれた。
ふたりで並んでぎりぎり収まるベッド。
肩が触れると、その体温が伝わってくる気がした。
「不思議だな。お主とは初めて顔を合わせたというのに、私はずっと前からお主を知っているような気がするのだ」
「…………」
どうして。
どうしてこの人はそんな事を言うのだろう。
僕は涙を抑えられなかった。
「怖かったのだな。肩が震えている……」
背を向けて寝ていた僕を、サンデルが背後から抱き締めてくる。
「赤子を抱えているのに最前線で戦うなど、お主は美しさだけでなく強さも持ち合わせている。まるで乾いた地に美しく咲く花の様だな……」
『君は汚れてなんかいない。気高く美しい花車が似合う人だ』
「……っ……」
耳元で優しく囁く声が、胸を締め付けた。
サンデルは僕を抱き締めたまま眠ってしまったのか、その吐息が耳にかかる。
僕はそれでなかなか眠れない夜を過ごした。
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