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第41話《平和の為の犠牲》
戦いは再び膠着状態に陥っているという知らせが入ったのは翌朝の事だった。
互いに死傷者も出ていて、サンデルは無理に攻めればより多くの死傷者が出る事を懸念してしばらくは進軍をせず態勢を立て直す事にすると軍の人たちに言った。
「ローツ軍も4割の死傷者が出ている様だが、ユープ隊長は軽傷との事だ」
「そうですか……」
僕は昨日の硝子で覆われた庭にサンデル、コーバスと共に来ていた。
4人ほどが座って食事が出来そうな席に座り、花を眺めながら話をする。
「ステアさん、昨日は大変でしたね。赤ちゃんを抱えて凄惨な場面に遭遇してしまって。ですがサンデルの傍にいる以上、昨日の様な場面は何度となく訪れる事と思います」
「はぁ……」
和かな表情で語るコーバス。
「サンデル、ステアさんはどこまで知っているのか聞いていますか?」
「いや、私は内部に敵がいる事くらいしか話していない」
「ステアさん、ローツでは何故我々が戦っているのか教えてもらっていますか?」
「ローツの方からはズワルツの圧政に耐えかねて独立を目指している……という風には聞いていました」
僕の言葉に、ふたりは顔を見合わせる。
「やはりそうですよね。仰る通りです」
「あぁ、我々の国が長きにわたりローツにしている事は決して許される事ではない」
「ステアさん、何故このような状況に陥ってしまったのか、聞いて頂けますか?」
コーバスの表情が険しくなり、僕は知らなければいけない気がして頷いていた。
「ありがとうございます。長くなると思いますがよろしくお願いいたします……」
それから、コーバスは僕の知らなかったローツとズワルツとの間の話をしてくれた。
ズワルツがローツに対して圧政を始めたのは、サンデルの祖父の代にローツで銃の材料として使えて他国と高値で取引が出来る鉱物が見つかった事がきっかけだった事。
そして、その採掘の為にローツの人々、特にローツで暮らす身体能力の高いウォルフ族を無理矢理働かせるだけでなく危険な作業をさせ、それで命を落とさせたり、反抗する者を次々と殺したり……という状況が続いた事によりローツの人々が立ち上がり、独立を巡る戦いに繋がったという事。
それらを話している間のコーバスは、悲しそうな顔をしている様に見えた。
「この国……いや、私の一族は狂っているのだ。私にもその血が流れていると思うと吐き気がする……」
「サンデル、アナタは違います。だからこそわたしはアナタに付き従っているんです」
苦悶の表情を浮かべるサンデルに、コーバスは笑顔を見せる。
「ステアさん、サンデルもわたしもズワルツの人間でありながら、人の生命を顧みないこの国の犠牲者なんです」
「えっ……」
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