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第42話

「私がウォルフ族の血を引いていたという話をしたな。それは私の父がウォルフ族の血を引く母上をローツから無理矢理連れて来て妾としたからだ」 僕が驚いたのをよそにサンデルが言った。 「そうして産まれた私は父の主治医でありウォルフ族の研究をしていたエトに匿われて育った。というのは私の異母兄とその母親が私の命を狙っていたからだ。彼奴らにとってウォルフ族は動物であり、母上も私が幼い頃、私の目の前で殺された」 「そんな……」 サンデルが語る過去の話。 その悲惨さに、僕は聞いていて胸が苦しくなった。 サンデルはすぐ上の異母兄とその母親は王太子になる為に既に王太子に指名されていた長兄を毒殺し、その罪をエトに着せ処刑へと追い込んだ事を知り、復讐と共に自分が王太子になる事を決意した事を話した。 「エトはわたしにとっても父のような存在でした。わたしはハウト族という種族なのですが、現国王が戦いに非協力的だったハウト族の集落を襲い、焼き払いました。ただひとり生き残った私は全てを失い、エトに助けられてサンデルと兄弟のように一緒に育ったんです。この火傷はその時のものです……」 そう言ってコーバスは左腕の包帯を少しだけ外してひどいやけどの跡を見せてくる。 「私はコーバスと秘密裏に計画を立て、母上を殺し、エトを殺した異母兄とその母親、国内にいた一族を全員殺し、その首全てを父の前に並べて王太子の座を私に渡すよう迫った。父は跡継ぎが私しかいなくなった事もあるが自分の生命が可愛いのだろう、すぐに私を王太子に指名してくれた。父は私を恐れ、戦いの及ばぬ場所で隠居しているようなものだが、祖父の代から我が家に仕える頭の腐った家臣たちからすれば私はそれまでのやり方を否定する邪魔者でしかない。故に昨夜のように隙あらば私を殺そうとしているのだ」 「…………」 「ステアさん、アナタがローツ軍に加勢し、優勢へと大きく動かしてくれたお陰でわたしたちの計画も間もなく完了します」 「……あぁ、ローツ軍がこの城を目指して来た時、全てを終わらせる」 心が決まっている、というような表情のサンデルに対して、それを見ているコーバスが悲しい瞳をしているように僕には見えた。 けれど、サンデルを前にどうしてそんな瞳をしているのか聞く事は出来なかった。

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