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第2話
部屋に戻った晶はビニール袋を置き、ため息をついた。
「全く。光、ちゃんと前見て歩かないから」
そうして、冷蔵庫を開け、ビニール袋から食材を取り出し入れる作業をしつつ唇を尖らせた。
「...ごめん」
しゅんとしながら、光は晶にビニール袋を渡し、晶が冷蔵庫に入れる物は詰めていく。
「でも、あの人、いい人だったね!俺が悪いのに卵買ってきてあげようか、なんてさ!」
明るい笑顔の光だが、晶に至っては無表情で作業をこなすのみ。
「どうだか。光に媚びうったか、気に入られたくて優しいこと言ったんじゃない?」
「まーた、始まった、晶のやきもち症」
光が笑いながら晶を背後から抱き締める。
「ぶつかった男がみんながみんな、ゲイな訳ないじゃん」
「そりゃ、まあ、そうだけど、ぶつかったのは光なのにさ」
「これからスーパー行く、て言ってたし、ついでに、て思っただけじゃない?」
「ま、そうかもだけど...夕飯なんにする?特売だったからあれこれ食材は買っては来たけど」
「晶はなにが食べたい?」
ダイニングバーでたまに軽い調理を任されることもあり、晶と出逢う前もほぼ自炊だった光の方が料理は得意だ。
「んー...あ、唐揚げ。唐揚げ食べたいかも」
「唐揚げね、鶏肉あるからちょうどいいや、早速、タレに漬けこも」
「今さっき帰って来たんだし、少しゆっくりしたら?」
「すぐ終わるから」
そうして、光はキッチンに立ち、晶もそれを見て、味噌汁を作る為に立ち上がった。
味噌を入れるまで仕上げたら、しばらくの休憩の後、2人でキッチンに並び、料理。
といっても、殆どが光で、晶は味噌をとくだけで終わり。
「すぐ出来るからテレビでも見て、待ってて」
キッチンにいる光が振り返り、ソファに座る晶に声を掛け、暫し、晶は1人、寛いだ。
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