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第4話
浴室も浴槽も以前、2人が住んでいたアパートよりも広い。
全てにおいて、以前のアパートより広くはあるが浴室や浴槽の広さも2人が選んだポイントでもある。
互いに背中の流し合いっこをし、向かい合って湯船に浸かる。
「あー、気持ちい!」
「だね」
「上がったらもっと気持ちいいことしようね」
光が笑顔で言うなり、晶から笑顔が消える。
「光の変態!エッチ!ドスケベ!」
真顔で光を怒鳴りつけながら、湯船のお湯を手のひらで掬い、容赦なく掛けまくる。
「別に本当のことだし」
光は悪びれる事はなく、屈託のない笑みを見せた。
「あー、でも、アレだね、また卵買いに行かなきゃだね」
「だよね。特売じゃないけど...やっぱり、あの人に買ってきて貰えば良かったんじゃない?」
光が湯船のお湯で顔をバシャバシャ洗いながら晶に話すが、またもや晶の逆鱗に触れた。
「...卵を渡してまた光に会おう、て口実でしょ」
「まーだ、そんなこと言ってんの?すぐに晶、人を勝手に決めつけるじゃん、良くないよ、そういうとこ。単純に思いやりからの言葉かもなのにさー」
カッチーン、晶の頭の中で音がした。
「暑くなってきた!上がろ!」
光を置いて、さっさと晶は湯船を上がった。
取り残された光は湯船の中できょとん、とそんな晶の背中を見つめた。
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