5 / 30
第5話
「あー、すっきりしたあ」
光は黄色のTシャツにボクサー、首に掛けたバスタオルで濡れた頭を拭いながらリビングに戻る。
テレビの前で胡座をかき座り、右手に缶ビール、左手の拳を膝に置いた水色のTシャツにボクサー姿の晶がいた。
光はいつものことだが、普段、晶はめったに胡座をかいては座らないが、光は気に留めず、ただ晶が電源を付けたらやっていたバラエティ番組に目を向けた。
晶が無表情でビールを傾けている中、
「俺も飲もうっと!」
晶の背後を歩き、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと晶の隣に座った。
プシュ、とビールを空け、ごくごく喉を鳴らす。
「ぷはぁ!やっぱ、お風呂上がりのビール、最高だね!」
テレビに目を向けたまま、晶に声を掛けた。
晶は正面のテレビを真顔なまま見つめ、無言でビールを飲んでいる。
体感型のゲーム形式のバラエティ番組にさぞかし夢中なんだろうな、と光は晶をチラ、と横目で見、自身もビールを飲みながら番組を見た。
思わず、ギャハハハ、ぷは!と光は笑った。
「うわぁ!ヤバい、ヤバい!落ちるっ!」
正直、晶はただ単にテレビを付けたらやっていただけで、番組に興味はなく、内容も入っては来ていない。
ただただ、隣の光の笑い声にむしゃくしゃしているが、光は気がついてはいない。
「...しよっか、光。ベッド行こ」
突然、開いた晶の低い声に、一瞬、え?と間の抜けた声が出たが、うん、しよ!と光は邪気のない笑みを返した。
ともだちにシェアしよう!