20 / 30
第20話
「ゲイではない僕が相談相手になれるか、わからないけど...僕は地元にね、幼なじみでもある彼女がいるんだ」
「そうなんですね...」
「もし僕が晶くんの立場だったら...」
橋口が湯気を立てるカップを手に思案した。
「晶くんはさ、元彼の言うことを丸々、信じすぎなんじゃないかな?光くんの話しはちゃんと聞いてあげた?」
両手でカップを持った晶は、しばらく視線を泳がせ、首をゆっくり横に振る。
「僕の方が年上なんだし、いいアドバイスが出来たらいいんだけど。安心して。ゲイを差別するような気持ちはないから。ただ、僕はゲイではないから、わからない部分もあるかもしれない、それは承知してね」
優しい橋口の笑顔に、晶はようやく安堵の気持ちが生まれたと共に、類の存在を思い出した。
「....出店の準備で忙しいかな...」
ポツリ、呟く晶を見つめたまま、橋口はカップを傾けた。
「そ、その、電話、してもいいですか?」
橋口に告げると、もちろん、と返事を貰い、晶は類に電話した。
しばらくして、類が出た。
「久しぶり、晶、どうした?」
肩でスマホを挟み、手元の書類に目を通しながら類が明るい声。
「え...あ、その....」
晶が口下手なのは類は充分、承知だ。
「その感じだとなんかあった?」
「でも、その...忙しいですよね、類さん...それに僕と光のことだし、僕たちで解決しないと....」
「なに言ってんの、晶も光も僕には大事な存在なんだから。そういえば、忙しさにかまけて、引っ越し祝いにも行けなくて悪かったね、位置情報、送って貰える?」
「わ、わかりました」
「着いたら連絡するね」
そうして電話が終わると、さて、と類はデスクから立ち上がり、出かける準備に取り掛かる。
「出かけるの?類」
「うん。また後でね、マフィ」
類はマフィについばむような軽いキスをした。
ともだちにシェアしよう!