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第25話
「わっ、うわーっ!」
キッチンからの晶の叫び声と、ドンガラガッシャーン!とけたたましい音に光は目を覚ました。
「...晶、なにやってんの?」
ベッドから起き上がった光はキッチンに立つ、晶のエプロン姿を遠目に見つめた。
「あっ、起きちゃった?ごめん、朝ごはん作ろうとしてて...」
光は晶の隣で手元を見下ろした。
どうやら玉子を巻く作業に手間取っているようだ。
「む、難しいね、グチャグチャになっちゃった...」
「大丈夫だよ、やり直しきくから。一旦、火止めて、晶」
冷蔵庫から2つ卵をボールに入れ、水を少々と塩コショウ、手際よく光が混ぜ合わせる様に晶は釘付けになった。
「はい。晶、火つけて」
言われた通り、ガスを付け火を付けると、油を引き、光は晶の背中越しに四角い玉子焼き用のフライパンに流し込み。
まるで二人羽織のような体勢で、
「慣れないうちは強火にしないで。こう、プツプツしてきたらこうして...」
晶を後ろから抱き込むようにして、晶の失敗した玉子焼きを補足するように巻いていく。
「...魔法みたい」
光が晶の玉子焼きの周りを菜箸で丁寧に新たに玉子で包んでいく。
「はい、出来た」
晶の失敗した玉子焼きが光のお陰でパッと見、形が整い、あとは切るだけだ。
「凄い。さすが光...」
「や、別に誰でも出来るよ。慣れてしまえば」
背中越しに振り向くと光の眩しい笑顔があった。
「光」
「ん?」
「...ありがとね」
きょとんとした光は、
「こちらこそ。あ、そうだ。晶の味噌汁飲みたいな」
「うん、待ってて、味噌汁だけは負けないから」
「負けないって、なに」
光は爆笑しながら晶の背後を退き、互いに並びキッチンに立った。
光は玉子焼きを切り分け、晶は味噌汁担当。
類の気遣いで貰った休日の始まりは明るく優しく始まった。
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