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第26話

2人で作った朝ごはんを食べ、 「今日は光の好きな事だけをしよっ」 と晶の提案で、2人は久しぶりに並んで座り、海外ドラマの続きを観た。 時間が経つごとに2人の集中力が欠けていく。 明日は2人揃っての出勤だからだ。否応なしに現実に引き戻される。 「そ、そうだ。お隣から柿もらったんだった。切ってくるね」 「うん」 しばらくすると、次は光が、 「喉乾いたね、ジュース取ってくる。あ、ポテチも」 「うん」 2人の頭の中は口にしなくても明日のバイト先だ。和典が来ないといいけれど...。 そうして、その晩。晶と光は手を繋ぎ、眠った。 「光」 「うん?」 「泣かせてごめんね、俺...」 「もうその事はいいよ、晶。それより、明日さ...」 「うん....心配だよね」 「うん...」 互いに守りたい。守りたいのに守れない力不足を感じ、歯がゆい。 否応なしにバイトの時間はやってくる。 一緒に電車に乗りバイト先へ向かった。 「おはようございます」 いつもは明るい挨拶の光の声も暗い。 が、2人は互いに目を丸くした。 「おはよ、晶、光」 「おはよう」 そこには店長だった類と類の旦那のマフィの笑顔があったからだ。 「どうしたんですか?店長」 「もう店長ではないけどね」 と、笑って付け加えてから。 「和典とやらが来た時の為にさ、僕達も店に行こうってマフィと話し合ったんだ」 「大変だったね、光、晶」 「類さん、マフィ...」 晶も光もまさかの助っ人に泣きそうだった。というか光は涙を流していた。 「こら、光、泣くなって」 「だ、だって、この店に店長がいるなんて、夢みたいなんですもん...っ」 「可愛いなあ、光は」 「マフィもこら。和典って奴が来たら、教えて?僕らは客のフリしてるから。光はなるべく、カウンターにいて、和典って奴が来たら隠れてて」 「わかりました」 「....わかりました....っ」

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