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第27話

きっと店の終わり頃に和典は来るだろう、と晶が目論んでいた通りだった。 「類さん、類さん、あれです」 こっそり類に知らせ、類は類で、光とマフィに目配せした。 光はカウンターに潜んでいて。 マフィは後でね、のウインク。 1つの席に座る、和典の空いた隣の椅子に、偶然を装い、類は座った。 「相席、いいですか?」 類の笑顔に和典は油断し、それどころか、にやけてもいる。 光はともかく、晶は呆れた。ついでに類も。 こんな男に晶も光も惚れたのか、と。 特に光は、この男に騙された、と泣きじゃくり、仕事にならず、休ませたくらいだ。 2人ともセンスがないな、と内心、ため息をつきながら、 「なにを食べるんですか?どの料理も絶品ですよ」 「ですね、良かったら一緒に....」 「うちの子のお味は如何でした?」 にっこり類が微笑んだ。 「....え?」 「晶と光。なんでも先日、光を騙して薬を盛り、犯そうとしたそうですね」 「あ、あんたは一体」 「店長ですよ、2人の」 「あれはアイツが...無理やりではないし、薬を盛ったりなんかまさか、アイツの勘違いですよ」 「被害届、出すか悩んでるんです、薬を盛った、店の名前も検討ついてるんで」 和典の顔が些か青くなった。 「あ、そうだ」 類は和典の右腕を持ち上げ、捲りあげた。 「しっかり歯型ついてますね。抵抗出来なくて、噛み付いた、て光、言ってましたから」 すかさずスマホのカメラに収めた。 「ちょっ、いきなりなにすんだよ」 「それは光のセリフだと思いますけど?」 カウンターから秘かに見ている光と、その傍には晶もいる。 2人とも目を丸くしながらも、類の清々しい働きに感動していたが、それだけでは終わらない。 不意に、マフィが類の元に歩み寄ってきた。 突然の外国人の登場に、和典はパニックになりかけているようだ。 類に話しかけたマフィはまさかのイタリア語。類もイタリア語で返す。 たまに和典を指差しながら、2人はイタリア語で会話し、取り残された感の和典がビビっているのが目に見えてわかる。

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