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第11話

「緊張するね」 「そろそろ到着の時間だ急ぎなさい」 顔を出し一言挨拶でもと考えたが、父の 「しかしこんな大事な時に、本当に仕方のない奴だ」 と言う言葉に足が止まる。 「まぁ、いない方が安心じゃない?」 「こら、止めなさい」 自分の事だと直ぐに分かった。 ドレスアップし、客室へ移動する彼らは此方には気が付かない。 「だってこの前のお誕生日会もやらかしたじゃん」 幼い弟の揶揄いと蔑みの声に、心臓が早鐘をうつ。 「また鼻血吹かれても困るし」 「おい、よせ。せっかくの会食だぞ。水を差す様な話をするな」 気配を消しやり過ごしていると、家族の溜息。 失望が滲んでいた。 次々と悪し様な言葉が追い打ちをかける。

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