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第4話

自分の様な愚鈍でも、防衛本能は備わっているらしい。 咄嗟に頭を庇ったお陰で顔など目立つ場所に怪我はない。 本当は広範囲に擦り剥けていただろう腕は、厚手のカーディガンを羽織っていたから一応無事だ。 しかし派手に転んだのだ。一切無傷と言う訳にはいかなかった。 剥き出しの掌や指は擦り剝けてしまった。浅く皮膚が擦れている所も有れば、切り傷もある。爪に至っては剥がれかけたり割れたりと散々な有様だ。 「……うっぅ……」 強かに打ち付け骨が痺れる程の痛みに悶え、短く息を吐きながら膝を見ればパジャマのズボンが破れて、血が滲んでいた。 おまけに手も膝も血と土で汚れているから、尚更痛々しい。 「――こちらの眺めも素晴らしい」 無様に這い蹲ったまま、顔を上げ振り返る。 肩越しに園路の端、裏庭との境に見知らぬ男と父の姿が見えた。

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